アンチエイジングと再生医療2

アンチエイジングと再生医療、一見無関係の様に感じる両者ですが、老いについて知る時にその生命誕生の神秘に触れる事は決して無駄な事ではありません。代謝の際に消費される酵素には限りがあると言う事も再生医療の研究によって明らかにされた事なのです。もう一度繰り返しますが、私たちはこの大切な命の貯金を無駄遣いしないように、効率よく身体の各器官を正常に機能させるように生きて行く事が出来れば、それだけ若々しくいられる時間も長くなるのです。そうなれば加齢に老いを感じる必要性も減って行く事でしょう。これこそアンチエイジングの究極の目的と言っても過言ではないと私は考えています。

 

仮説1:卵細胞の増殖能力と寿命

受精とは卵子に精子が取り付く事で受精卵となり、そこから細胞分裂が始まり僅か10ヶ月強でほぼ人として完成した胎児となります。この事からもたった一つの卵子には爆発的な増殖力が秘められているという事が分かります。しかもただ細胞分裂を繰り返して増殖するのでは無く、巧みにプログラムを書き換えながら少しずつ違う細胞を作り出し、様々な臓器や器官を作り出して行くのです。恐らく地球上の優秀な科学者と技術者が結集したところでこれほど精密で精巧なものを作り出す事は不可能でしょう。しかし卵細胞にも寿命があります。以前、人の寿命が尽きるのは酵素を作り出す物質が枯渇する時だという話しをしました。そしてその物質の埋蔵量は生まれつき決まっていて後からその物質を追加する事は不可能だという話しをしたのを覚えてますか?この物質の埋蔵量も実は卵子に刻まれた情報の一つだと考えられているのです。つまり人の寿命とは卵細胞の寿命そのものなのではないかという仮説です。一見荒唐無稽な仮説のようですが体内の全ての細胞の大元がただ一つの卵細胞だとすると大元の卵細胞の寿命が尽きると連鎖的に全ての細胞はコピーする能力を失うと考えるのはむしろ自然な事なのかもしれません。

 

仮説2:幹細胞とがんと再生

がん細胞は体内で作られた異形の細胞で、不正コピーを繰り返しやがて人を死に追いやるものですが、その仕組みは幹細胞と非常に良く似ています。現在再生医療を行う上で最も大きな障害となっているのが、培養中の幹細胞が移植するとがん化する確立が非常に高いということなのです。つまりがん発生のプログラムと再生医療のプログラムは非常に似ているという事になります。がん細胞は単体で発生しても増殖しない細胞であれば大きな問題にはなりません。宿主を滅ぼすまで増殖を繰り返す所に大きな問題点があるのです。つまり、がん細胞も幹細胞が悪性に変化した細胞であると考えられ始めているのです。

 

仮説1と仮説2から

これら二つの仮説を総合して考えてみましょう。「人体の大元である卵細胞は本来、分裂再生を繰り返して増殖して行く細胞である」「人体の臓器や器官を構成している細胞にはこうした再生、増殖のプログラムが組み込まれている」「一方でその臓器が再生しない為の制御プログラムも仕込まれている」「細胞に含まれる幹細胞はがん細胞と良く似た構造を持っている」「がん細胞は宿主を滅ぼすまで再生増殖を繰り返す」「卵細胞には酵素の原料となる物質に関する情報も書き込まれている」です。要約しただけでも結構な情報量になりますね。ここから導きだされる事は、もし、体内の全ての臓器や器官が再生可能なものであれば、無秩序に再生増殖を繰り返す事で酵素の原料となる物質はあっという間に枯渇してしまうというものです。単細胞生物であれば自分の体を分裂させて子孫を増やして行く事が出来ますが、人間のように60兆個もの細胞をもつ多細胞生物の場合、そうはいきませんね。つまりある程度の寿命を確保して効率よく子孫を残すためには各細胞には際限なく再生と増殖を繰り返されては却って不都合なのです。そしてその制御プログラムにバグを生じた為に発生するのががん細胞という可能性があるのです。人体の神秘についてはまだまだ多くの事が謎に包まれています。上記の件も研究は進められていますがまだ仮説の域を出ていません。しかし、卵細胞にも寿命があり、代謝を司る酵素を作る物質量にも限界がある以上、老いは必ずやってくるものです。ただし、老いる時期を遅らせる事はこれらの事を頭に入れておく事である程度実践可能になります。老いる時期を遅らせる。そう、それこそがアンチエイジングに他ならないのです。